よく言われることですが、メガドライブの音声は「高音が響かない」とか「こもった音がする」とか「ノイズっぽい」との評価があります。
個人的には「家庭用ゲーム機器とはそういうもの」と、今まであまり気にしていなかったのですが、
先日、高音質化改造後のメガドライブの音声(下記)を聞く機会があり、あまりの音域の広さに「うちの音と全然違う!」とビックリしました。
○高音質化メガドライブ エレメンタルマスターのアトラクト音
(By「一息入れましょう」さん@youtube)
と言うわけで、色々調べてみたところ、数多くの方がFuture Driverさんの公開した高音質化改造を施していることが判りました。
○オペアンプを1個使ったメガドライブの音声高音質化改造
(By「Future Driver」さん)
http://68000.web.fc2.com/sound_mod/sound_mod.html
どの改造記事を拝読してみても、アンプ追加による高音質化には満足されており、実際に、1.で紹介した出力結果を聞いても納得の音質が得られるものです。
そのような中、毛色の違う改造を2つほど見つけ、そのシンプルさに興味を引かれました。
一つは内蔵の音声アンプ回路をパスしてしまう(FM音源直結)改造と、もう一つは内蔵の音声チップ(CX1034)周辺のフィルタ回路を改造する方法です。
○内蔵の音声アンプ回路をパスする(FM音源直結)改造
(By「がらくた文書工房」さん)
メガドライブに音声出力端子を増設する
○内蔵の音声チップ(CX1034)周辺のフィルタ回路を改造
(By「人生に疲れた男のblog」さん)
メガドライブ実機、純正ヘッドホンアンプでの高音質化改造
→ 皆さん貴重な情報を共有頂き、ありがとうございます。
前者はなんとセガ推奨?の改造方法で、FM音源チップの生音をそのまま引き出してやると言うシンプルなもの。
後者は、チップコンデンサを2個張り替えることで、世間的にダメダメと言われているメガドライブ内蔵の音声回路を改善すると言う、何というか真の実力?を引き出すと言うのでしょうか、メガドラFANとして非常に惹かれる改造です。
改造がシンプルな点と、何と言っても内蔵のアンプをそのまま使っているので本体のイヤホン出力や音量操作がそのまま使える利点があり、早速実施してみることに・・
メガドライブの音声出力の仕組みや改造の詳細については「人生に疲れた男のblog」さんの記事を参照いただければと思いますが、概要(というか原理?)を説明すると、
まず、メガドライブ内蔵のヘッドホン出力用音声チップ(CXA1034)周辺のローパスフィルタにより、FM音源の高音成分がごっそりカットされてしまっており、
周辺のチップコンデンサ(2か所)を680pF~1000pFのものに交換することで、従来カットされていた高音成分が蘇ると言うものです。今回は820pFのコンデンサ(カットオフ20KHz相当)に交換しました。
このチップコンデンサ張替えによる高音質化は、恐らく楊子平@hn12v1_jpさんの2019/8/22のツイートに関連しているのではないかと思われます。拝見する限り680pF置き換え(カットオフ22KHz相当)がオリジナルの改造のようです。
と言うことで早速改造してみましょう。
まず、メガドライブ背面のネジ(6カ所)をドライバーで外し、筐体カバーをあけます。
すると基板がむき出しになるので、基板を固定しているネジを外して、筐体から基板を外します。
ちなみに基板のレビジョンはVA5(315-5402)でした。
丸印のICがヘッドホン音声チップ(CXA1034)です。うちの基板は互換品のAN7108が載っていました。
基板の裏側です。丸印の2か所のチップを交換します。
チップコンデンサのハンダを吸い取りリボンで除去して、ハンダこてを当てつつピンセットでつまみ上げ(持ち上げ)てやるとポロっと外れますが、パターンはがれに要注意です(下側は少々危うかった・・)。
買ってきたチップコンデンサ(820pF)をハンダ付けしてやります。
あとは、分解したのと逆順に組み立ててやれば改造は終了です。
○おまけ(パスコンの追加によるノイズ改善)
上で紹介した「人生に疲れた男のblog」さんの記事に記載されていますが、
CXA1034(AN7108)のPin12(VCC)とPin13(GND)間にコンデンサを追加してやるとベースのノイズが若干改善するようです。
手持ちで0.1uFのが無かったので、余っていた22uFのチップコンデンサ(容量大きいですが・・)を赤丸部につけてみたところ、高音域のノイズ(キーンと言う音)が改善しました。残念ながらサーと言うホワイトノイズはあまり改善しませんでした。(気になるレベルでは無いですが)
同じくエレメンタルマスターのオープニング音で確認しました。
電源ノイズの影響を少しでも排除するため、安定化電源を用意。音声出力はヘッドホン端子にUSBキャプチャーケーブルを繋いでPCで録音しました。
サンプルは容量の関係でMP3に圧縮しており、わずかに高音が弱めです。それでも聞くと判りますが、改造後は高音が伸びるというかヌケが非常に良くなっています。
メガドライブ本来の音声は、高音も良く出ていたということですね。
この改造後、さまざまなゲームのBGMで今まで聞こえなかった音が聞こえるようになり「ほう」と感心することもあれば、低めのBGMの時の効果音(ショット音など)が前に出て「む?」と思うこともあり、
良くも悪くも変化を感じて(楽しんで)います。
後者の「む?」については、後日、scrap_aさんから教えて頂いた下記の製品記事を読み「思い出補正だったのか」と納得?した次第です。
○AKIBA PC Hotline!
メガドライブの音質を再現、音源を「レトロ風味に劣化させる」ヘッドホンアンプ
やはり、皆さんにとって「メガドライブの音はこうじゃないと!」みたいなモノがありますよね!
今回の改造によりメガドライブ本体側の音質は改善されましたが、その後、某掲示板でメガドライブとメガCDとの接続時の音声ノイズ(メガCD側で発生)について情報を頂きました。(本当にありがとうございます!)
○某掲示板より
どういうことか説明しますと、メガCDは、効果音などSEをメガドライブの音声回路を使って発生します。この時メガドライブ側のヘッドホン端子から、メガCD側の音声入力端子に接続されるのですが、両機器間の電位差によりGNDループ状態が発生して音声ノイズとなります。
上(4.)で上げた音声は、本体側のヘッドホン端子から直接録音しており、このノイズは入りませんが、メガCDゲームを起動して後部の音声出力端子の音を注意深く聞いて見たところ、CDドライブが動作するたびに「キュルルー・・」「プツ、プツ」と言ったノイズが発生している事が判りました。(かなり小さな音なのとCDドライブの駆動音もあり、今まで気が付きませんでした・・)
対策としては、メガドライブのヘッドホン出力と、メガCDの音声入力端子との間に「グランドループアイソレータ」と呼ばれる装置を挿入してやることで解消できるようです。
ご教示頂いたのは、秋月電子で販売している下記のキットです。
○購入品
ST-32使用ヘッドホン出力⇔ライン入力昇圧トランスキット
山水製のトランス(ST-32)を利用しており、ヘッドホン出力をLINE入力レベルに変換するのみのかなりシンプルな回路です。
組み立てるとこんな感じです。(Sansuiロゴが懐かしい!)
使い方はシンプルで、下記画像のようにメガドライブとメガCDとの間に購入したキットを挿入するだけです。
スターブレードで確認してみましたが、効果は劇的で、CDドライブが動作するたびに発生する音声ノイズが完全に無音になりました。
このキットの価格は1,800円(税込)ですが、互換品を利用した廉価版(640円税込)も存在するようです。ぜひお試しを。
○互換品(AT-403)を利用したキット
AT403使用ヘッドホン出力⇔ライン入力昇圧トランスキット
■おまけ
素の基板のままと言う訳にもいかず、かつ、Sansuiロゴが格好良かったので、ダイソーでディスプレイケース(49mm×3)を購入して筐体に加工してみました。
と言ってもたいした工作ではなく、スペーサを介して基板をケースに固定して、アクリルカバーに3.5mmステレオプラグ差し込み用の穴を開けたのみです。
まず、ケースの台座にスペーサーを使って基板を固定します。(ケースの背が高いので合わせる意味もあり・・)
アクリルカバーに保護用のテープを貼って、3.5mmステレオプラグの穴の位置に合わせて、油性マジックでマーキング。
あとはルーターで丁寧に大きさや位置を調整しつつ穴を開ければ完成です。
メガドライブに接続。なかなか良い雰囲気です。